「うちの業種は、ストレスチェックをやっている会社が多いのか少ないのか分からない」——中小企業の人事担当者からよく聞く疑問です。実は業種によって実施率には大きな差があります。厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査」によると、常用労働者10人以上の事業場全体の実施率は75.4%ですが、10〜29人規模に絞ると業種によって57.2%〜90.4%まで、実に約33ポイントの開きがあります。この記事では、業種別の実施率データを整理したうえで、実施率が低くなりがちな業種でも無理なく始められる対策を解説します。
ストレスチェック実施率、まず規模別の全体像を押さえる
業種別の話に入る前に、事業場規模別の実施率を確認しておきましょう。同調査(対象:常用労働者10人以上の民営事業場)による実施率は以下の通りです。
| 事業場規模 | 実施率 |
|---|---|
| 10〜29人 | 73.5% |
| 30〜49人 | 72.9% |
| 50〜99人 | 79.3% |
| 100〜299人 | 79.2% |
| 300〜999人 | 85.3% |
| 1,000人以上 | 96.7% |
| 全体 | 75.4% |
現行制度では50人以上の事業場が実施義務の対象ですが、それでも50〜99人規模の実施率は79.3%にとどまっており、義務化業種でも約2割が未実施という現状があります。2028年4月1日には50人未満の事業場にも義務化が拡大されるため、10〜29人・30〜49人規模の実施率(73%前後)は今後さらに底上げが求められる数字です。
業種によって実施率はここまで違う
同じ「10〜29人規模」の事業場でも、業種によって実施率には大きな差があります。厚生労働省の同調査から、主な業種の実施率(10〜29人規模)を抜粋しました。
| 業種 | 実施率(10〜29人) | 実施率(全体) |
|---|---|---|
| 不動産業,物品賃貸業 | 90.4% | 81.0% |
| 医療,福祉 | 84.0% | 82.8% |
| 情報通信業 | 81.4% | 84.7% |
| 金融業,保険業 | 80.1% | 81.3% |
| 卸売業,小売業 | 78.0% | 78.0% |
| 産業計(全業種平均) | 73.5% | 75.4% |
| 建設業 | 72.9% | 74.6% |
| 複合サービス事業 | 71.2% | 74.7% |
| 運輸業,郵便業 | 69.5% | 72.0% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 65.6% | 63.4% |
| 製造業 | 64.3% | 74.9% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 63.2% | 68.6% |
| 教育,学習支援業 | 58.8% | 63.4% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 58.9% | 66.7% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 57.2% | 68.8% |
小規模事業場(10〜29人)に限ると、サービス業・宿泊飲食業・教育業・製造業・学術研究業が実施率60%を下回っており、平均(73.5%)を大きく下回っています。一方、不動産業や医療・福祉、情報通信業は同規模でも80%を超えており、業種による差がはっきり表れています。
なぜ業種によって実施率に差が出るのか
差が生まれる背景として、以下のような業種特性が考えられます(厚生労働省の調査は実施率のデータのみを示しており、要因分析は本記事独自の考察です)。
現場作業が中心で、全従業員が一斉にパソコンやスマホを使える環境にない(建設業・製造業) 現場作業員は必ずしも各自の端末を持っているとは限らず、オフィスワーカー中心の職種に比べて「一斉にオンラインで受検してもらう」ハードルが高くなりがちです。
シフト制・多店舗展開で全従業員の受検状況を把握しにくい(宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業) 勤務時間がバラバラで、パート・アルバイトを含む非正規雇用の比率も高い業種では、誰が受検済みで誰が未受検かを本社側で一元管理しづらいという事情があります。
産業医との契約率、労務管理体制の違い(教育、学習支援業など) 産業医の選任義務がある50人以上の事業場でも、非常勤の産業医との契約にとどまり、ストレスチェックの実務まで手が回っていないケースが見られます。
実施率が低い業種でもできる具体的な対策
現場中心・シフト制・非正規雇用比率が高いといった事情があっても、以下のような工夫で実施率を上げている企業があります。
1. スマホ完結型のオンラインツールを使う 紙の調査票を配布・回収する運用は、現場作業員や複数店舗を抱える業種では管理コストが高くなります。スマホ1台で受検から結果通知まで完結するツールを使えば、各自の空き時間に受検してもらいやすくなります。
2. QRコードで受検リンクを共有する 社内メールを日常的に見ない従業員が多い場合、休憩室やロッカールームにQRコードを掲示し、スマホで読み取ってその場で受検してもらう方法が有効です。
3. 地域産業保健センターを無料で活用する 50人未満の事業場は、労働基準監督署の管轄地域にある地域産業保健センター(地産保)で、面接指導や相談対応を無料で受けられます。産業医と契約していない企業でも、高ストレス者が出た場合の受け皿を確保できます。
4. シフトごとに受検期間を分けて設定する 全従業員に同じ1週間で受検させようとすると未受検者が出やすいので、シフトグループごとに受検期間をずらし、店長・現場責任者が進捗を確認する運用にすると回収率が上がります。
Smart Stress Checkは、スマホからの受検・自動集計・産業医面談の要否判定までをオンラインで完結できるツールです。現場作業員や複数拠点を抱える企業でも、QRコードひとつで受検を案内できます。
FAQ
Q1. 実施率が低い業種は、罰則の対象になりますか? 50人以上の事業場でストレスチェックを実施しなかった場合、労働基準監督署への報告義務違反として50万円以下の罰金の対象となり得ます(労働安全衛生法第120条)。ただし実務上は、まず是正指導が行われるのが一般的です。50人未満の事業場は現時点では努力義務であり、2028年4月1日の施行までは罰則の対象外です。
Q2. 現場作業員が多く、パソコンを使わない場合はどうすればいいですか? スマホ対応のオンラインツールを使い、QRコードで受検ページに誘導する方法が現実的です。スマホを持たない従業員がいる場合は、紙の調査票を併用し、結果は事務担当者が代理で入力する運用も可能です。
Q3. パート・アルバイトもストレスチェックの対象になりますか? 契約期間が1年以上(またはその見込み)で、週の労働時間が正社員の4分の3以上であれば対象になります。多店舗展開の飲食業・小売業などでは、対象者の線引きを事前に整理しておくと受検率の管理がしやすくなります。
Q4. 実施率が低い業種は、労災や離職とも関係がありますか? 本記事で紹介した実施率のデータと労災・離職率を直接結びつけた公的統計は見当たりませんでした。因果関係を断定することはできませんが、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合は事業場規模が大きいほど高い傾向があり、規模の小さい事業場ほど体制整備が後回しになりやすいことがうかがえます。
Q5. 実施率が低い業種は、何から始めればいいですか? まずは自社の業種・規模が全国平均(10〜29人規模で73.5%、全体で75.4%)と比べてどうかを把握し、次に「誰が受検し、誰が受検していないか」を可視化できる仕組みを作ることから始めるのがおすすめです。地域産業保健センターへの相談や、オンラインツールの無料プランの活用など、初期費用をかけずに始められる方法も複数あります。
まとめ
ストレスチェックの実施率は、事業場規模だけでなく業種によっても大きな差があります。特に建設業・製造業・宿泊飲食業・教育業などは、現場作業やシフト制、非正規雇用比率の高さといった業種特性から、実施のハードルが相対的に高くなりがちです。2028年4月1日の義務化拡大に向けて、業種特性に合った受検方法(スマホ完結・QRコード・シフト別実施期間の設定など)を早めに整えておくことが、無理のない運用につながります。Smart Stress Checkなら、こうした業種特性を踏まえたオンライン実施を無料プランから試すことができます。