「ストレスチェックの結果は、いつまで・どこに保存すればいいのか」。実施後にこの疑問にぶつかる人事・総務担当者は多いはずです。結論からいうと、ストレスチェックの個人結果は労働安全衛生規則第52条の13にもとづき原則5年間の保存が必要です。ただし「何を」「誰が」保存すべきかは対象によって異なり、電子保存の可否や外部委託時の責任分担まで含めると、意外と整理されていない会社が少なくありません。この記事では、保存対象の範囲から実務上の注意点まで、中小企業の担当者が押さえておくべきポイントをまとめます。
ストレスチェックの記録は「5年間」保存が必要
労働安全衛生規則第52条の13では、ストレスチェックの結果に関する記録を5年間保存することが定められています。保存の起点は、その年度のストレスチェックを実施した日からとするのが一般的な運用です。
5年という期間は、次にストレスチェックを実施するまでの1年だけでなく、複数年にわたる従業員のストレス状態の推移を追跡できるようにする意図があります。高ストレス者への継続的なフォローや、集団分析による職場環境改善の効果検証にも、複数年分のデータが必要になるためです。
なお、保存義務があるのは「調査票の原本」そのものではなく、そこから得られた結果データです。紙の調査票をコピーしたものを何年も保管し続ける必要はなく、必要なデータを適切な形で残しておけば足ります。
保存が必要なものと、不要なもの
ストレスチェックに関連する情報はいくつかの種類があり、それぞれ保存義務の有無や保存者が異なります。まず全体像を整理します。
| 対象 | 保存義務 | 保存期間 | 主な保存者 |
|---|---|---|---|
| 個人のストレスチェック結果(ストレスの程度の評価結果) | あり | 5年間 | 実施者・実施事務従事者、または同意があれば事業者 |
| 高ストレス者・面接指導対象者の判定結果 | あり | 5年間 | 同上 |
| 面接指導の結果記録 | あり | 5年間 | 事業者 |
| 集団分析結果(10人以上の部署・職種単位) | 明確な法定義務なし(努力義務・推奨) | 5年間が目安 | 事業者 |
| 調査票の原本・コピー | 保存不要 | — | — |
| 検査結果等報告書(労基署提出分の控え) | 保存が望ましい | 5年間が目安 | 事業者 |
ポイントは、個人結果は原則として本人の同意なしに事業者側に渡らないという制度設計です。この「同意」の有無が、次の「誰が保管するか」を決める分かれ目になります。
誰が保管するのか — 実施者と事業者の線引き
ストレスチェックの結果は、受検した労働者本人と、実施者(医師・保健師など)・実施事務従事者しか本来アクセスできません。事業者(会社)が個人結果を直接見ることは、原則としてできない仕組みです。
- 本人が事業者への結果提供に同意していない場合: 個人結果は実施者・実施事務従事者側で5年間保存するのが望ましいとされています。社内の人事担当者がこのデータに触れることはできません。
- 本人が同意している場合: 実施者から事業者に結果が提供され、この場合は事業者が5年間保存する義務を負います。
つまり「誰が保管するか」は組織内の役職ではなく、本人同意の有無によって法的な保存責任者が変わるという点を理解しておく必要があります。人事権を持つ人事課長や経営者であっても、同意のない個人結果には原則アクセスできません。
外部の健診機関やASPサービスを実施者として利用している場合、実務上は委託先が実施者側のデータを保存しているケースが大半です。自社にどこまでのデータが渡ってきているのか、契約時に確認しておくとよいでしょう。
会社が個人結果を保管できるのはどんなときか
事業者が個人のストレスチェック結果を保管できるのは、労働者本人が実施者から会社への結果提供に同意した場合に限られます。この同意は、ストレスチェックの受検そのものへの同意とは別物です。
実務上よくある誤解が、「ストレスチェックを受けさせた=結果を見てよい」というものですが、これは誤りです。同意は次の2段階で取得されます。
- ストレスチェックを受検することへの同意(これは業務命令に近く、対象者は基本的に受検します)
- 実施者から事業者へ、個人の結果を通知することへの同意(任意。拒否しても不利益取り扱いは禁止)
同意を得て事業者が結果を保管する場合も、閲覧できる担当者を必要最小限に限定し、鍵のかかるキャビネットやアクセス制限のあるシステムで管理するなど、第三者が容易にアクセスできない環境を整える義務があります。
紙と電子、どちらで保存してよいか
ストレスチェックの結果は、紙媒体・電磁的記録(電子データ)のいずれで保存しても構いません。中小企業では紙のファイルで管理しているケースも多いですが、電子保存には次のような利点があります。
- 保存期間(5年)の管理をシステム上で自動化しやすい
- アクセス権限をID・パスワード単位で細かく制御できる
- 複数拠点がある場合でも一元管理しやすい
一方で、電子保存を行う場合は、厚生労働省が所管する法令(e-文書法関連のガイドライン等)に沿った適正な保存体制を整える必要があります。具体的には次の点に注意してください。
- 改ざん防止措置(アクセスログの記録、編集権限の制限など)
- 見読性の確保(必要なときにすぐ内容を確認・出力できること)
- アクセス制御(実施者・実施事務従事者以外がログインできない権限設計)
- バックアップとバージョン管理(誤削除・システム障害への備え)
自社でExcelやサーバー上のフォルダで管理する場合も、パスワード保護や共有範囲の設定だけでなく、「誰が・いつアクセスしたか」を追える状態にしておくことが望ましいです。
外部委託しているときの保管責任はどうなるか
健診機関やストレスチェックの外部サービスに実施業務を委託している場合、個人結果のデータは委託先(実施者側)のシステムやサーバーで保存されているのが一般的です。この場合、自社としては次の点を契約時・利用開始時に確認しておくと安心です。
- 委託先での保存期間が5年以上確保されているか
- サービス終了・契約解除時に、データの返却または適切な廃棄が行われるか
- 委託先のセキュリティ体制(暗号化、アクセス制御)がどうなっているか
- 労基署への提出が必要な「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を、必要なときに自社で出力・保管できるか
委託先まかせにしていると、契約終了後にデータの所在が分からなくなるトラブルも起こり得ます。保存責任の所在は契約書や利用規約で明文化しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 退職した従業員のストレスチェック結果はどう扱えばよいですか? A. 在籍中に実施したストレスチェックの記録は、退職後も残りの保存期間(実施日から5年間)は保存を継続する必要があります。退職を理由に個人結果を破棄してよいわけではありません。
Q. 5年を過ぎた記録は必ず廃棄しなければなりませんか? A. 法律上、5年を超えた記録の保存を禁止する規定はありません。ただし個人情報の保有は必要最小限にとどめるのが個人情報保護の基本原則であり、利用目的を終えたデータは適切な方法で廃棄することが望ましいとされています。
Q. 集団分析結果にも5年の保存義務がありますか? A. 個人結果と異なり、集団分析結果(10人以上の単位での集計)には明確な法定保存期間の定めはありません。ただし複数年の推移を職場環境改善に活用する観点から、個人結果と同様に5年程度は保存しておくことが実務上推奨されています。
Q. 紙の調査票そのものは保存しておくべきですか? A. 調査票の原本やコピーを長期保存する義務はありません。結果データ(評価結果・判定結果)が残っていれば、調査票自体は必要なくなった時点で処分して差し支えありません。
Q. 保管場所に施錠は必須ですか? A. 法令上「施錠」自体が明文で義務付けられているわけではありませんが、「第三者がアクセスできない状態」を確保することが求められています。紙であれば施錠可能なキャビネット、電子であればアクセス権限管理が実務上の標準的な対応です。
まとめ・チェックリスト
ストレスチェックの記録保存は、期間だけでなく「何を」「誰が」保存するかまで含めて理解しておく必要があります。最後にチェックリストとして整理します。
- 個人のストレスチェック結果・判定結果は原則5年間保存する
- 個人結果を事業者が保管できるのは、本人が結果提供に同意した場合のみ
- 同意がない場合は実施者・実施事務従事者側で5年間保存する
- 面接指導の結果記録は事業者が5年間保存する義務がある
- 紙・電子どちらでも保存可能だが、電子保存はアクセス制御と改ざん防止が必要
- 外部委託時は、委託先の保存期間・契約終了時のデータ返却/廃棄ルールを確認する
- 退職者の記録も、残りの保存期間中は継続して保存する
Smart Stress Checkでは、個人の回答データを暗号化して保存し、経営者・人事担当者には10人以上の集団分析結果のみを表示する設計になっています。実施年度ごとの検査結果等報告書もPDFで出力できるため、保存・提出それぞれの実務負担を軽減できます。ストレスチェックの実施体制そのものを見直したい場合は、サービス詳細から確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法令解釈や実施体制については、必要に応じて労働基準監督署や社会保険労務士等の専門家にご確認ください。