業種別ガイド

医療・介護施設のストレスチェック義務化|夜勤・感情労働・人手不足への対応

医療機関・介護施設のストレスチェック義務化を解説。非常勤職員の対象範囲、複数事業所の数え方、産業医不在時の実施者の選び方、離職防止への活用法をFAQ形式で紹介します。

#ストレスチェック#医療機関#介護施設

「うちは夜勤も多いし人手も足りないから、ストレスチェックまで手が回らない」——医療機関や介護施設の経営者・人事担当者からよく聞く声です。しかし厚生労働省「令和6年度 過労死等の労災補償状況」によると、精神障害の労災請求件数は「医療、福祉」が983件と全業種の中で最多で、支給決定件数も270件で1位です。感情労働・夜勤・慢性的な人手不足が重なりやすい業界だからこそ、早めの対策が従業員の定着にも直結します。この記事では、医療・介護施設がストレスチェックにどう向き合うべきか、実務のポイントをFAQ形式で解説します。

医療・介護施設でストレスチェックがとくに重要な理由

まず数字で現状を確認しておきましょう。厚生労働省が公表した令和6年度「過労死等の労災補償状況」では、精神障害の労災請求件数は全体で3,780件(前年度比205件増)、支給決定件数は1,055件(同172件増、6年連続増加で初の1,000件超え)でした。業種別(大分類)で見ると、請求件数・支給決定件数のいずれも「医療、福祉」がもっとも多く、請求983件・支給決定270件です。さらにその内訳では「社会保険・社会福祉・介護事業」が請求589件・支給決定152件と、医療・福祉業の中でも中心的な割合を占めています。

背景にあるのが、この業界特有の3つの負荷です。

1つ目は感情労働です。患者や利用者、その家族への対応は、身体的なケアに加えて感情のコントロールを常に求められる仕事です。理不尽な要求やクレームにさらされる場面も少なくありません。

2つ目は夜勤・交代制勤務による生活リズムの乱れです。夜勤は睡眠の質を下げ、慢性的な疲労やストレス耐性の低下につながりやすいことが知られています。

3つ目は慢性的な人手不足です。厚生労働省の推計では、介護職員は2026年度に約25万人、2040年度には約57万人を新たに確保する必要があるとされています。ちなみに介護労働安定センターの調査による訪問介護員・介護職員の令和6年度離職率は12.4%で、厚生労働省「雇用動向調査」による全産業平均14.2%は下回っているものの、これだけの採用ニーズがある中で「辞めさせない」ための職場環境づくりの重要性は他業種以上に高いといえます。

さらに2026年10月1日からは、介護事業所を含む全事業所でカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が新たに義務化されます。医療・介護現場は利用者・患者やその家族との接点が多いだけに、ストレスチェックとカスハラ対策を並行して整備する必要がある業界でもあります。

医療・介護業界特有の課題

シフト制・夜勤による高ストレス要因

24時間体制の病院や入所系の介護施設では、日勤・準夜勤・夜勤といったシフトが常態化しています。ストレスチェックを実施する際は、夜勤専従者や交代制勤務者も含めて対象者から漏らさないことがまず重要です。実施時期についても、特定のシフトに偏った日程では回答率が下がりやすいため、複数日・複数時間帯に回答機会を設ける、あるいはオンラインで各自のタイミングで回答できる方式にするなどの工夫が有効です。

複数事業所・複数職種混在の実施単位の考え方

病院・クリニック・訪問看護ステーション・デイサービス・グループホームなど、複数の拠点を運営する法人は珍しくありません。ストレスチェックの実施義務は法人単位ではなく「事業場」単位で判断するのが原則です。同じ法人でも、拠点が独立して人事労務管理を行っている場合は、拠点ごとに常時使用する労働者数をカウントします。逆に、本部が一括して労務管理を行っている小規模な出張所的な拠点は、直近上位の事業場と合算して数えることもあります。自法人の拠点がどちらに該当するかは、労務管理の実態(人事権や労働時間管理の所在)で判断されるため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。

また、医師・看護師・介護職・リハビリ職・事務職など職種が混在する職場でも、ストレスチェックはすべての対象労働者に一律で実施する必要があります。職種によって受けさせる・受けさせないという運用はできません。

実施者選びで注意したい「利害関係」の除外規定

医療機関は院内に医師や保健師がいることが多く、自院のスタッフがストレスチェックの「実施者」になれる点は他業種にない強みです。ただし、実施者やその補助者になれるのは、対象となる労働者について人事上の権限を持たない人に限られます。院長やナースマネージャーなど、評価・異動・解雇といった人事権を持つ立場の人は、たとえ医師や保健師の資格を持っていても実施者にはなれません。院内で実施者を選任する際は、この利害関係の除外規定を必ず確認しましょう。人選が難しい場合は、外部の実施者に委託する方法もあります(産業医が院内にいない場合の対応は後述のFAQで解説します)。

50人未満の医療・介護施設が今から準備すべき5ステップ

2028年4月1日には、これまで努力義務だった50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化され、初回は2029年3月31日までの実施が求められます。今のうちに準備しておきたい5ステップは次のとおりです。

ステップ 内容
1. 実施体制の決定 院内・施設内の医師や保健師を実施者にするか、外部委託するかを決める
2. 対象者の洗い出し 非常勤・パート含めて対象となる職員をリストアップする(次章FAQ参照)
3. 実施ツールの選定 無料ツールも含めて、勤務形態に合った実施方法を選ぶ
4. 面接指導の体制整備 高ストレス者が出た場合の面接指導の依頼先を事前に決めておく
5. 集団分析の活用設計 部署・職種別の分析結果をどう職場改善につなげるか、あらかじめ方針を決めておく

とくに重要なのはステップ5です。ストレスチェックは「実施すること」自体が目的ではなく、結果を職場改善に生かして初めて意味を持ちます。次章で具体的に解説します。

離職防止につなげる運用

ストレスチェックの結果は、大きく分けて「高ストレス者への個別対応」と「集団分析による職場改善」の2つの形で活用できます。

高ストレス者への対応では、本人の申し出に基づいて医師による面接指導を実施し、必要に応じて就業上の措置(配置転換や労働時間の調整など)を検討します。医療・介護現場では夜勤免除や部署異動が現実的な選択肢になることが多いため、あらかじめ人事異動の余地や代替要員の確保策を考えておくと、いざというときに動きやすくなります。

集団分析では、部署別・職種別・年代別にストレス要因を比較することで、「特定の病棟や夜勤帯でストレスが高い」「入職1〜3年目の離職リスクが高い」といった傾向が見えてきます。医療・介護業界は人手不足が採用の入り口だけでなく定着の出口でも課題になりやすいため、集団分析の結果を管理職研修やシフト改善、新人フォロー体制の見直しに反映させることが、離職防止の実務的な一歩になります。

FAQ

Q1. 非常勤やパートの看護師・介護職員はストレスチェックの対象になりますか?

対象になる場合があります。ストレスチェックの対象者は「常時使用する労働者」で、目安は(1)契約期間の定めがない、または1年以上の雇用が見込まれること、(2)1週間の労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であることの両方を満たす人です。医療・介護現場は非常勤や日勤のみのパート職員が多いため、対象者の線引きを誤ると法定人数のカウント漏れにつながります。契約内容と実際の勤務実態の両方を確認して判断しましょう。

Q2. 複数の事業所(訪問看護ステーション・デイサービスなど)を運営している場合、人数はどう数えますか?

前述のとおり、原則は事業場(拠点)ごとに常時使用する労働者数を数えます。人事労務管理が独立している拠点はその拠点単独でカウントし、本部が一括管理する小規模拠点は上位の事業場に合算します。訪問看護やデイサービスなど、事業所数が多い法人ほど判断に迷いやすいため、拠点ごとの労務管理の実態を一度整理しておくことをおすすめします。

Q3. クリニックで産業医がいない場合、どうすればいいですか?

産業医がいなくても、医師や保健師など一定の資格を持つ人が「実施者」になればストレスチェックは実施できます。50人未満の事業場であれば、地域産業保健センターの無料支援を利用する方法もあります。詳しくは産業医がいない会社のストレスチェック対応で解説しています。

Q4. 外部委託の費用相場はどのくらいですか?

外部委託の費用は従業員数やサービス内容によって幅がありますが、無料で使えるツールも含めた比較は外部委託 vs 自社実施の費用比較で詳しく解説しています。Smart Stress Checkのように、実施から報告書作成まで無料で使えるツールを選べば、コストを抑えながら義務化に備えられます。

Q5. カスハラ対策義務化(2026年10月)とストレスチェックはどう違いますか?両方対応する必要がありますか?

両方とも従業員のメンタルヘルスに関わる制度ですが、目的と根拠法が異なります。ストレスチェックは労働安全衛生法に基づき、ストレス要因を定期的に把握して未然にメンタル不調を防ぐための制度です。一方カスハラ対策は労働施策総合推進法の改正(2025年6月11日公布、2026年10月1日施行)に基づき、利用者・患者やその家族からのハラスメントから従業員を守るための相談体制・対応マニュアルの整備などを事業者に義務づけるものです。医療・介護現場はどちらの対象にもなりやすいため、ストレスチェックの集団分析結果に「利用者・家族対応でのストレス」が多く見られる場合は、カスハラ対策の相談窓口や対応マニュアルの整備と合わせて検討すると効果的です。

まとめ

医療・福祉業は精神障害の労災請求件数が全業種で最多という事実は、裏を返せば「対策をすれば従業員の定着に直結しやすい業界」ということでもあります。非常勤職員の対象範囲や複数事業所の数え方といった実務の壁はありますが、一つひとつ整理すれば50人未満の事業場でも十分に対応可能です。

Smart Stress Checkは、厚生労働省推奨の57項目調査票に対応し、登録から実施、法定帳票の自動作成までを無料で行えるツールです。人手不足の医療・介護現場でも、まずは無料で始めて、義務化に向けた体制づくりの第一歩を踏み出してみてください。

無料ツール

Smart Stress Check — 完全無料でストレスチェックを実施

58項目の調査票・QRコード受検・集団分析・法定報告書まで、すべて無料。中小企業・50人未満でも今すぐ使えます。

無料アカウントを作成する →

クレジットカード不要・登録1分