「うちはシフト制でアルバイトが多いから、ストレスチェックの対象者すら把握しづらい」——小売業・飲食業の経営者や人事担当者から、こうした声をよく聞きます。加えて2026年10月1日には、改正労働施策総合推進法によりカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が全事業主の義務になります。接客業は日常的に顧客と接する分、カスハラによるストレスも大きく、ストレスチェックとカスハラ対策を切り離さずに進めることが実務上のカギになります。この記事では、小売業・飲食業特有の課題を整理したうえで、50人未満の事業場が今から準備すべきステップをFAQ形式も交えて解説します。
接客業でストレスチェックとカスハラ対策を同時に考えるべき理由
2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策が事業主の雇用管理上の措置義務になります。従業員が1人でもいれば大企業・中小企業・個人事業主の区別なく対象になる点が特徴で、BtoCの消費者だけでなくBtoBの取引先担当者からの著しい迷惑行為も対象に含まれます。また、店舗での対面のやり取りだけでなく、SNS等インターネット上で行われるハラスメントも対象です。具体的な措置としては、社内規程の整備、相談体制の構築、対応マニュアルの作成などが厚生労働省の指針で示されています。
小売業・飲食業は、他業種に比べて顧客と直接対面する時間が長く、クレーム対応や理不尽な要求に日常的にさらされやすい業種です。厚生労働省もこの実情を踏まえ、業種別のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルの整備を進めており、令和6年度にはスーパーマーケット業編、令和7年度には宅配業編が作成されています。カスハラは従業員の高ストレス要因になりやすく、ストレスチェックの結果にも直結するテーマです。両方を別々の取り組みとして進めるのではなく、相談窓口や対応フローを共通化して一体で運用する方が、限られた人員の中小企業には現実的です。
小売業・飲食業特有の課題
ストレスチェックを小売業・飲食業で実施しようとすると、他業種にはない壁にぶつかりやすいものです。
シフト制・アルバイト比率の高さにより、全従業員が同じタイミングで受検することが難しく、実施期間中に出勤しない従業員が抜け落ちてしまうケースがよくあります。繁閑差も大きく、繁忙期(催事・年末年始・行楽シーズンなど)に実施時期が重なると、現場の負担感から回答が形骸化しやすい点も注意が必要です。
複数店舗を運営している場合の実施単位も、よくつまずくポイントです。ストレスチェックは会社単位ではなく「事業場」単位で義務が判定されるため、場所的に独立した店舗はそれぞれ別の事業場として扱われます。労働者数のカウントでは、契約期間や労働時間で絞り込まず「常態として使用されているか」で判断するため、週1回しか出勤しないパート・アルバイトであっても継続雇用であればカウントに含め、派遣先で受け入れている派遣労働者もカウント対象です。現行制度では常時50人以上の労働者を使用する事業場のみが義務対象ですが、2028年4月1日からはこの規模要件が撤廃され、50人未満の店舗も含めて全事業場が対象になる予定です。今のうちに店舗ごとの実施体制を整えておくことが、後々の負担軽減につながります。
50人未満の店舗が今から準備すべき5ステップ
- 実施方針の策定:外部委託か自社実施かを決める。費用感については外部委託と自社実施のコスト比較記事も参考にしてください。
- 対象者の洗い出し:契約期間が1年以上(更新見込みを含む)で、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上のパート・アルバイトを店舗ごとに確認します。4分の3に満たない場合も、2分の1以上であれば対象に含めることが望ましいとされています。
- 実施体制の整備:紙のアンケートを配布・回収する運用はシフト制の現場では負担が大きいため、スマホで完結する受検方式やQRコードでの案内、店舗ごとの実施期間の分散などを検討します。
- カスハラ相談窓口との一体運用:新たに専用窓口を設けるのが難しい中小企業では、社内で普段から使っているチャットツールや掲示板に相談導線を組み込むといった工夫が現実的です。
- 高ストレス者面談体制の確保:産業医と契約していない店舗も多いため、対応方法を事前に確認しておく必要があります。詳しくは産業医がいない会社のストレスチェック対応ガイドをご覧ください。
カスハラ対策とストレスチェックを一体で進めるメリット
相談窓口や対応フローを共通化すれば、限られた人員でも運用負荷を抑えられます。また、カスハラ被害の実態を把握できていると、ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員の背景要因を特定しやすくなり、面談指導や職場環境改善の精度も上がります。何より、顧客対応の負担に会社が向き合っている姿勢が伝わることは、接客業で課題になりやすい離職防止にも直結します。人手不足が続く小売業・飲食業にとって、従業員が安心して働き続けられる環境づくりは採用競争力にもなります。
FAQ
Q. アルバイト・パートはストレスチェックの対象になりますか? A. 契約期間が1年以上(更新により1年以上使用される見込みを含む)で、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば対象です。4分の3未満でも2分の1以上であれば対象に含めることが望ましいとされています。
Q. 複数店舗を運営していますが、店舗ごとに人数をカウントするのですか? A. 原則として、場所的に独立した店舗はそれぞれ別の事業場として扱われ、労働者数も店舗ごとにカウントします。継続雇用のパート・アルバイトや派遣労働者もカウントに含める点に注意してください。現行制度では各店舗が50人未満であれば義務対象外ですが、2028年4月の義務化拡大以降は規模を問わず対象になります。
Q. カスハラ対策とストレスチェック、どちらを先に進めるべきですか? A. 施行日が迫っているカスハラ対策(2026年10月1日)への対応を優先しつつ、相談窓口や実施体制を共通化してストレスチェックの準備も並行して進めるのが効率的です。
Q. ストレスチェックの費用はどれくらいかかりますか? A. 実施方法によって幅があります。詳細は外部委託 vs 自社実施のコスト比較記事で解説しています。
Q. 産業医と契約していない店舗でも実施できますか? A. 可能です。産業医がいない50人未満の事業場向けの支援制度もあるため、産業医がいない会社のストレスチェック対応ガイドを参考にしてください。
まとめ
小売業・飲食業は、シフト制・アルバイト比率の高さ・複数店舗運営といった業種特有の事情から、ストレスチェックの実施が後回しになりがちです。しかし2026年10月1日のカスハラ対策義務化を機に、相談窓口や実施体制をまとめて整備すれば、限られた人員でも無理なく両方に対応できます。2028年4月の義務化拡大を見据え、店舗ごとの実施体制を早めに整えておくことをおすすめします。Smart Stress Checkなら、シフト制の現場でも使えるスマホ完結の受検方式を無料プランから試すことができます。