義務化ガイド

高ストレス判定者に会社がしてはいけないこと

ストレスチェックで高ストレスと判定された社員に会社がしてはいけないことを解説。禁止される行為、配置転換や人事評価で迷う場面、就業上の措置の正しい進め方をFAQ形式で整理します。

#ストレスチェック#不利益取扱い#高ストレス者

ストレスチェックを実施して高ストレス者が出たとき、何もしないのも不安だが、本人のためにと動いた対応が裏目に出ることもあります。異動させる、負担の軽い部署に移す、評価の際に考慮する——こうした「配慮のつもり」が、法律上の不利益取扱いにあたってしまうケースがあるのです。この記事では、高ストレスと判定された社員に対して会社がしてはいけないことを先に整理したうえで、迷いやすい3つの場面と、社内で事前に決めておくべきことをまとめます。

なぜ「してはいけないこと」を先に決めておく必要があるのか

高ストレス者への対応で問題になりやすいのは、悪意ある扱いよりも「よかれと思って」の対応です。本人の負担を減らそうと繁忙部署から外す、無理をさせないよう昇進を見送る——いずれも会社側には悪気がなくても、結果だけを見れば判定結果を理由にした不利益な扱いに該当しかねません。

高ストレス者が実際に出てから対応方針を考え始めると、目の前の1人の事情に引っ張られて判断がぶれやすくなります。先に「何をしてはいけないか」という線引きを決めておけば、個別のケースが起きたときにも落ち着いて判断できます。

制度上はっきり禁止されていること

労働安全衛生法第66条の10に基づき、ストレスチェックや面接指導に関連して労働者に不利益な取扱いをすることは禁止されています。厚生労働省のマニュアルでは、次の行為が明示的に禁止事項として挙げられています。

禁止される行為 内容
解雇すること 結果や面接指導の申出を理由にした解雇
契約の更新をしないこと 有期契約労働者の雇止め
退職勧奨を行うこと 自主退職を促す働きかけ
配置転換又は職位の変更を命じること 本人の意向や医師の意見を無視した異動・降格
その他労働関係法令に違反する措置 上記以外でも労働関係法令に反する不利益な扱い全般

禁止の対象になる「理由」も明確に定められています。ストレスチェックを受けなかったこと、結果の提供に同意しなかったこと、面接指導の申出を行わなかったこと、そして面接指導の申出をしたこと自体も、不利益取扱いの理由にしてはいけません。受検しなかった従業員への対応は「受けたくない」と言われたときの対応で扱っているため、本記事では高ストレスと判定された後の対応に絞ります。

判断に迷う3つの場面

禁止行為のリストを見ただけでは判断できない、グレーに感じる場面が実務では多くあります。代表的な3つを挙げます。

①本人のためを思った配置転換

「負担を減らしてあげたい」という善意からの異動でも、本人の意向を確認せず、医師の意見も踏まえずに一方的に命じれば、不利益取扱いと受け取られるおそれがあります。厚労省マニュアルでは、就業上の措置としての配置転換は「医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内」であり、「あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じて了解が得られるよう努める」ことが求められています。本人に相談せず決めてしまう進め方自体がリスクです。

②繁忙部署から外す

高ストレス者を一時的に負荷の低い部署へ移す判断も、本人の同意や医師の意見を伴わないまま進めれば同じ構造の問題になります。「外された」という受け止め方をされると、本人のキャリアへの影響への不安にもつながります。

③評価や昇進の判断材料にしてしまう

ストレスチェックの結果そのものは実施者と本人以外に開示されない仕組みになっており、人事評価の場に結果を持ち込むこと自体が想定されていません。結果の開示範囲の詳しいルールはストレスチェック結果は誰が見る?で整理していますが、評価者が「あの人は高ストレスだったらしい」という情報を評価に反映させることは、結果を理由にした不利益取扱いに該当する可能性が高い行為です。

では会社は何ができるのか

禁止行為を避けることと、何もしないことは別です。会社がとれる対応には次のような進め方があります。

まず、就業上の措置は本人の申出と同意を起点にします。高ストレス者本人が面接指導を申し出た場合、面接指導を実施した医師の意見を、遅くとも1か月以内に聴取することが定められています。この医師の意見を踏まえ、必要と認められる範囲でのみ、就業上の措置を検討します。

措置の内容を本人に説明する際は、人事労務部門の担当者が、措置の内容とその理由を説明することが基本です。また、措置を実行するうえでは職場の管理監督者の理解も欠かせないため、必要に応じて管理監督者にも目的と内容を説明します。重要なのは、本人の実情を考慮し、了解を得るよう努めるプロセスを踏むことであり、会社側の判断だけで一方的に進めないことです。

社内で先に決めておく3つのこと

高ストレス者が実際に出る前に、次の3点を決めておくと迷いが減ります。

  1. 結果を誰が扱うか — 個人結果にアクセスできる人を実施者・実施事務従事者に限定し、人事評価を行う立場の人間が結果そのものに触れない体制にしておく
  2. 申出を受けたら誰が動くか — 面接指導の申出が来たときの窓口と、医師の意見を聴取するまでの社内フローをあらかじめ決めておく
  3. 措置を決める場に誰が入るか — 就業上の措置の内容を検討・説明する担当者を決めておき、本人への説明と管理監督者への説明の役割を分けておく

このうち1つ目の「結果を誰が扱うか」は、開示範囲そのものの詳しい整理をストレスチェック結果は誰が見る?で扱っているため、そちらもあわせて確認しておくと体制を作りやすくなります。

小規模な会社でのつまずき

従業員数が少ない会社ほど、高ストレス者への対応は難しくなります。理由は単純で、人数が少ないと「誰が高ストレスだったか」が周囲に推測されやすいからです。衛生委員会の設置義務がある50人以上の事業場と違い、50人未満の小規模事業場では措置を検討する公式な場が制度上明確に定められていないことも、属人的な判断に偏りやすい一因になります。

集団分析についても同じ配慮が必要です。厚労省マニュアルでは、集計・分析の単位が10人を下回る場合、個人が特定されるおそれがあることから、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけないとされています。小規模な部署やチーム単位で集団分析を出してしまうと、実質的に個人の結果を推測できる状態を作ってしまうため、注意が必要です。Smart Stress Checkでは、経営者側の画面には10人以上の集団分析結果のみを表示する仕組みにしており、こうした小規模事業場特有のリスクを踏まえた設計にしています。

よくある質問

Q1. 高ストレス者を本人の希望で異動させるのは問題ありませんか?

本人が自ら希望して異動を申し出た場合は、不利益取扱いにはあたりません。問題になるのは、会社側が本人の意向を確認せず、一方的に決めて命じる進め方です。

Q2. 面接指導を申し出たことを理由に、昇進を1年見送ってもよいですか?

申出をしたこと自体を理由にした不利益な扱いは禁止されています。昇進の見送りが申出と結びついていると受け取られれば、不利益取扱いに該当するおそれがあります。

Q3. 高ストレス者が多い部署の管理職を異動させることは問題になりますか?

管理職本人の結果を理由にした異動であれば同じ問題が生じます。ただし職場環境改善の一環として組織的な見直しを行う場合は、個人の結果を直接の理由にしていないかを切り分けて検討する必要があります。

Q4. 高ストレス者に対して、本人の希望を聞かずに負担の軽い業務に変更しました。違法ですか?

医師の意見を踏まえず、本人の意見も聴かずに一方的に業務内容を変更した場合、不利益取扱いと判断されるリスクがあります。個別の状況によって判断が分かれるため、迷う場合は労働局や社会保険労務士に確認することをおすすめします。

Q5. 契約社員の契約更新時期に高ストレス判定が出た場合、更新しない判断はできますか?

判定結果や面接指導の申出を理由にした雇止めは禁止されています。契約更新の判断基準が結果と無関係であることを説明できる状態にしておく必要があります。判断に迷う個別のケースは、断定せず労働局や社会保険労務士に確認してください。


高ストレス者への対応で最も大事なのは、起きてから考えるのではなく、先に「してはいけないこと」の線を引いておくことです。Smart Stress Checkでストレスチェックを実施する際も、結果の開示範囲と就業上の措置の進め方を、担当者が出る前に社内で確認しておくことをおすすめします。

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