実施ガイド

ストレスチェック実施規程とは?記載事項とひな形の作り方【50人未満向け】

ストレスチェック実施規程に書くべき記載事項、厚労省モデル例の構成、衛生委員会がない50人未満の事業場での作り方をFAQ形式で解説します。

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「ストレスチェックは、規程まで作らないといけないのでしょうか」——外部委託先を決め、調査票の中身も固まってきた段階で、担当者がふと立ち止まるのがこの疑問です。結論から言うと、法令上は「規程」という文書の作成そのものが義務付けられているわけではありません。ただし、誰が・いつ・どう実施し、結果をどう扱うかという社内ルールを定め、あらかじめ労働者に周知することは求められており、これを文書化したものが実施規程です。この記事では、厚生労働省の一次資料に基づいて、実施規程に書くべき事項、モデル例の構成、そして50人未満の事業場が衛生委員会なしで規程を作る際の実務上の進め方を整理します。

ストレスチェック実施規程とは何か、なぜ必要か

ストレスチェック制度は、労働安全衛生法第66条の10に基づき、事業者が実施体制や実施方法をあらかじめ定め、労働者に周知したうえで運用することとされています。厚生労働省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)でも、事業者はストレスチェック制度の社内ルールとして、実施体制・実施方法・記録の保存・情報管理・情報の開示や苦情処理・不利益な取扱いの防止について定めることが望まれる、とされています。

50人以上の事業場では、この社内ルールを固める前段階として、衛生委員会等でストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえて事業者が規程として定める、という流れが指針で示されています。一方、衛生委員会の設置義務がない50人未満の事業場では、労働安全衛生規則第23条の2に基づき、安全または衛生に関して関係労働者の意見を聴く機会を設けることとされており、この機会を使って実施体制・実施方法等について意見を聴くことが想定されています。

この社内ルールは、必ずしも「規程」という形式の文書でなければならないわけではありません。ただし、マニュアルでは「仮に、社内ルールを規程として作成する場合は、巻末資料の『ストレスチェック制度実施規程(モデル例)』を参考にしてください」としたうえで、この規程例は定めておくと良いと考えられる事項を詳細に示した一例であり、各事業場の実情に応じてアレンジしてよいとしています。つまり規程として文書化するかどうかは事業場の裁量ですが、作っておけば、委託先の変更や担当者の異動があっても運用ルールが属人化しにくく、労働者への説明や周知も一枚の文書で完結する、という実務上のメリットがあります。

規程に書くべき事項を整理する

厚労省モデル例をもとに、実施規程に盛り込むべき主な事項を整理すると、次のとおりです。

章 記載事項の例
総則 規程の目的、根拠法令(安衛法第66条の10)、変更手続き、周知方法
実施体制 委託先の外部機関、実務担当者の指名、実施者・実施事務従事者の位置づけ、面接指導担当医師の依頼先
実施方法(ストレスチェック) 実施時期、対象者の範囲、調査票の種類と調査形態、高ストレス者の選定方法、受検の取扱い、結果の通知方法
実施方法(面接指導) 申出の方法・期限、実施日時と場所の調整、医師からの意見聴取の方法、就業上の措置の実施方法、面接指導以外の相談窓口
集団ごとの集計・分析 集計・分析の対象集団、分析手法(仕事のストレス判定図等)
記録の保存 ストレスチェック結果・面接指導結果・集団分析結果それぞれの保存主体と保存期間(面接指導結果は5年間)
情報管理 面接指導結果や集団分析結果の共有範囲、社内での閲覧制限
情報の開示・苦情処理 開示請求や苦情の申立て窓口、手続きの方法、対応者の守秘義務
不利益取扱いの防止 受検しないこと・結果に同意しないこと・面接指導を申し出たこと等を理由とした不利益取扱いを行わない旨の明記

このうち、実務担当者と実施者・実施事務従事者の区別、記録の保存期間、不利益取扱いの防止の3点は、労働者への説明責任に直結する部分であり、抜け漏れなく記載しておきたいところです。

厚労省モデル例の構成をベースに条文を並べる

厚労省マニュアルの巻末資料には、全29条+附則からなる実施規程のモデル例が掲載されています。構成は大きく次の7章に分かれています。

第1章の総則で規程の目的と周知方法を定めたあと、第2章で実施体制(委託先、実務担当者、実施者・実施事務従事者、面接指導担当医師)を、第3章でストレスチェックと面接指導の実施方法を、第4章で記録の保存方法を、第5章で情報管理を、第6章で情報の開示・苦情処理を、第7章で不利益な取扱いの防止をそれぞれ定める、という流れです。附則には施行期日を記載します。

自社で一から書き起こすよりも、このモデル例の章立てに沿って自社の実情(委託先の名称、実務担当者の部署名、実施時期の月など)を当てはめていくほうが、記載漏れを防ぎやすく現実的です。厚労省マニュアルはPDFで公開されており、モデル例の条文をそのままベースに使うことができます。

50人未満の事業場が規程を作るときの割り切り方

50人未満の事業場では、衛生委員会という会議体の設置義務がないため、「調査審議」という手続きをそのまま踏むことはできません。マニュアルはこの点について、労働安全衛生規則第23条の2に基づく「関係労働者の意見を聴く機会」を活用すればよいとしています。これは必ずしも会議体の形をとる必要はなく、それぞれの事業場の実情に応じて実効性が確保できる方法でよいとされており、具体例として、定例の業務ミーティングの場を使う、朝礼などの打合せの場を使う、といった運用が挙げられています。

実務的には、事業者としての方針表明とあわせて実施体制・実施方法等の案をあらかじめ作成し、これを社内に周知したうえで労働者から意見を募る、という順番でも差し支えありません。意見聴取は、労働者数10人以上50人未満の事業場で選任が必要な衛生推進者または安全衛生推進者を中心に行うことが望ましいとされています。10人未満の事業場では衛生推進者等の選任義務自体がないため、事業者自らがこの役割を担うことになります。

規程という形式にこだわりすぎず、「委託先が決まった」「調査票の種類が決まった」といった実施体制の各要素が固まった時点で、都度、関係労働者に周知しながら規程の項目を埋めていく進め方でも、制度の趣旨には沿います。

外部委託する場合、規程に書くときに混同しやすい役割

実施規程を書く際、最も混同されやすいのが「実務担当者」と「実施者・実施事務従事者」の違いです。委託先の外部機関に実施者を選任させ、実施事務従事者を配置させる一方で、事業場内には、委託先との連絡調整やストレスチェックの実施計画の策定を担う実務担当者を置く、という二段構えの体制になります。

実施者は、委託先の外部機関に所属する医師・保健師・一定の研修を受けた歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれかである必要があり、個人のストレスチェック結果等の健康情報を取り扱うことから守秘義務が課されます。一方、事業場内の実務担当者は、個人の健康情報を取り扱う立場ではないため、人事に対して直接の権限を持つ監督的地位にある者を指名することも可能です。規程には、この二つの役割を明確に書き分けておくことが、労働者に安心して受検してもらうためにも重要です。

集団分析の取扱いを規程に書くときの注意点

集団ごとの集計・分析についても、規程に対象集団や分析手法を記載しておくのが一般的です。ここで押さえておきたいのが、2027年4月1日に施行される省令改正です。2026年6月30日に公布された労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第112号)により、安衛則第52条の14第1項に、集団分析を「特定の個人を識別することができない方法で」実施することが新たに明文化されます。

厚労省の通達(令和8年6月30日付け基発0630第2号)は、これはあくまで従来の解釈を明文化したものであり、運用の変更を伴うものではないとしています。集計・分析の単位が10人を下回る場合には原則として集団分析結果の提供を受けないという既存の実務(この10人という下限は在籍者数ではなく実際の受検者数でカウントします)を、これまでどおり規程に反映しておけば、施行後にあらためて内容を書き換える必要はありません。

よくある質問

Q1. 実施規程は労働基準監督署に届け出る必要がありますか。

いいえ、実施規程そのものの届出は求められていません。届出義務があるのは、労働者数50人以上の事業場におけるストレスチェック結果の報告書(心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書)であり、規程の作成・届出とは別の手続きです。50人未満の事業場にはこの報告義務自体がありません。

Q2. 就業規則とは別に実施規程を作る必要がありますか。

法令上、就業規則への記載とストレスチェックの実施規程は別のものとして扱われます。就業規則にストレスチェックの受検を義務として書き込むこと自体、受検義務を課していない法の趣旨に照らして避けるべきとされているため、実施規程は就業規則とは切り離した社内ルールとして整備するのが基本です。

Q3. 厚労省のモデル例をそのまま使ってよいですか。

マニュアルには「定めておくと良いと考えられる事項を詳細に示した一例」とあり、そのままの利用を否定するものではありません。ただし委託先の名称、実施時期、実務担当者の部署名など、自社の実情に合わせて空欄部分を埋め、内容を実態に一致させることが前提です。実態と異なる規程を周知してしまうと、かえって労働者の混乱を招きます。

Q4. 休職者はどう扱えばよいですか。

厚労省モデル例では、ストレスチェックの実施期間中に1か月以上休職していた社員は対象外とする例が示されています。一方、対象者の判断基準そのもの(契約期間・労働時間による4分の3基準)は休職の有無で変わるものではないため、休職中の扱いをどうするかは規程に明記しておくとトラブルを避けやすい部分です。

Q5. 50人未満でも規程を作るべきですか。

法令上、規程という文書形式そのものは必須ではありませんが、実施体制・実施方法・記録の保存・情報管理・不利益取扱いの防止といった社内ルールを定めて周知することは、事業場の規模を問わず求められています。50人未満の事業場は2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化されるため、口頭や断片的な周知に頼るより、簡潔でも文書化しておいたほうが、委託先とのやり取りや労働者への説明が一貫します。

まとめ

実施規程は、法令が直接その作成を義務付けているものではなく、実施体制・実施方法・記録の保存・情報管理・不利益取扱いの防止といった社内ルールを、労働者にきちんと周知するための手段です。50人以上の事業場は衛生委員会での調査審議を経て、50人未満の事業場は労働安全衛生規則第23条の2に基づく関係労働者の意見聴取を経て、それぞれ規程としてまとめていくことになります。厚労省のモデル例をベースに、実務担当者と実施者・実施事務従事者の役割分担、記録の保存期間、そして2027年4月1日施行の集団分析の明文化を反映しておけば、当面書き換えが必要になる心配もありません。

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