「ストレスチェックは実施したものの、労基署への報告書はどう書けばいいのか分からない」——外部委託先から実施結果のデータが届き、あとは提出するだけという段階で、担当者が最後につまずきやすいのがこの報告書です。この記事では、正式名称「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」(様式第6号の2)について、誰が・いつまでに・どこへ提出するのか、記入項目の考え方、そして2025年1月から原則化された電子申請の方法までを、厚生労働省の一次資料に基づいて整理します。
ストレスチェック結果等報告書とは
正式名称は「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」で、様式第6号の2と呼ばれます。厚生労働省の特設ページで様式のPDFが公開されており、機械読み取りのため白色度80%以上の用紙を使い、印刷した用紙をコピーして使い回さないよう案内されています。
この報告書は、ストレスチェックを「実施したこと」自体を労基署に届け出るための書類です。個々の労働者の回答内容やストレス判定結果そのものを提出するわけではなく、対象人数や実施状況を集計した数値を報告する仕組みになっています。
誰が、いつまでに、どこに提出するのか
提出義務があるのは、労働安全衛生法第66条の10および労働安全衛生規則第52条の21に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。事業場単位での判定になるため、本社は50人以上でも支店が49人以下であれば、その支店には報告義務がありません(ただし実施自体は望ましい対応です)。
提出先は、その事業場を管轄する所轄の労働基準監督署です。提出のタイミングは法令上「実施後、遅滞なく」とされており、明確に「実施から◯日以内」という日数が定められているわけではありません。多くの実務解説では、実施年月から数ヶ月以内、実務上は年1回の実施サイクルに合わせて毎年ほぼ同時期に提出する運用が一般的とされています。前回提出からおおむね1年以内を目安に、次の実施・報告のサイクルを回すと管理しやすくなります。
記入項目を1つずつ確認する
様式に記入する主な項目は次のとおりです。実際の項目名・欄の配置は必ず厚労省PDFの現物で確認してください。
| 項目 | 記入のポイント |
|---|---|
| 対象年 | ストレスチェックを実施した年(西暦または年度) |
| 労働保険番号 | 労働局から事業所ごとに交付される14桁の番号。用紙右上の欄に記入し、労働保険事務組合に事務委託している場合のみ枝番号も記入 |
| 検査実施年月 | ストレスチェックを実際に実施した年月 |
| 事業場の名称・所在地 | 複数事業場がある会社は、事業場ごとに個別の報告書を作成する |
| 在籍労働者数 | 検査実施年月の末日現在の、その事業場で常時使用している労働者数 |
| 検査を受けた労働者数 | 実際にストレスチェックを受検した人数(在籍労働者数と一致しないのが通常) |
| 面接指導を受けた労働者数 | 高ストレス者と判定され、医師による面接指導を受けた人数 |
| 実施者の氏名等 | ストレスチェックの実施者(医師・保健師等)の氏名・職種 |
| 集団分析の実施の有無 | 集団ごとの分析を行ったかどうかのチェック欄 |
「在籍労働者数」を検査実施時点ではなく年度末や決算期の人数で記入してしまう誤りがよく見られます。あくまで検査実施年月の末日現在の人数である点に注意してください。
つまずきやすい3つの論点
①在籍労働者数はいつ時点の数字か 上記のとおり「検査を実施した月の末日現在」の人数です。実施期間が長期にわたる場合(複数回に分けて実施する等)は、どの月を基準にするか社内でルールを決めておくと迷いません。
②受検者数と対象者数がずれるとき 休職中の労働者、育児・介護休業中の労働者、長期出張中の労働者などは、ストレスチェックの対象者ではあっても実際には受検できないケースがあります。この場合、在籍労働者数と検査を受けた労働者数に差が出ますが、それ自体は問題ではありません。受けなかった理由を無理に報告書に記載する欄はなく、実態の数値をそのまま記入します。
③面接指導0人でも提出は必要か 高ストレス者がゼロだった、あるいは高ストレス者はいたが面接指導の申出がなかった場合でも、ストレスチェック自体を実施した事業場は報告書の提出義務があります。「面接指導の実績がないから提出しなくてよい」という扱いにはならない点に注意してください。
提出しなかった場合どうなるか
労働安全衛生法第100条第1項に基づく報告をせず、または虚偽の報告をした者は、同法第120条により50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。ただし、未提出や記載漏れがあった場合にただちに罰則が科されるわけではなく、実務上は労働基準監督署からの指導や是正勧告が先に行われるのが通例です。度重なる未対応や悪質な虚偽報告があった場合に、刑事事件として扱われる可能性がある、という位置づけで理解しておくとよいでしょう。
50人未満の事業場はどうなるのか
現時点(2026年9月)で、常時50人未満の事業場にはストレスチェックの実施義務そのものがなく、努力義務にとどまっています。したがって、労基署への報告書提出義務も現時点では課されていません。
2028年4月1日に予定されている改正労働安全衛生法の施行により、事業場規模を問わずストレスチェックの実施が義務化される見通しですが、施行後に50人未満の事業場へ報告書の提出義務まで課されるのか、それとも実施のみが義務でどの範囲を報告するのかといった運用の詳細は、本記事執筆時点で確定した情報を確認できていません。小規模事業場向けの実務マニュアル等が今後公表される見込みのため、続報を確認してから対応することをおすすめします。現時点で50人未満の事業場が自主的にストレスチェックを実施している場合、報告書の提出は任意です。
電子申請(e-Gov)での提出について
2025年1月1日から、労働者死傷病報告や定期健康診断結果報告などとあわせて、この検査結果等報告書を含む労働安全衛生関係の一部の手続きについて、e-Gov電子申請システムを通じた電子申請が原則として義務化されました。電子申請の環境が整っていない事業場については、当分の間の経過措置として、従来どおり書面での提出も認められています。
書面で提出する場合は、厚労省の様式PDFをダウンロード・印刷して手書きで記入するほか、「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を使うと、入力漏れのチェックや過去データの流用ができ、印刷までの作業を省力化できます。ただし、このサービスはあくまで書面提出用の帳票を作成する入力支援ツールであり、電子申請そのものを代替するものではない点に注意してください。原則である電子申請を行う場合は、e-Gov電子申請システム側の手続きに従う必要があります。
FAQ
Q1. 報告書はストレスチェックを実施するたびに毎回提出が必要ですか? A. はい。年1回の実施が義務であれば、実施のたびに報告書を作成・提出します。複数事業場がある会社は事業場ごとに個別に提出します。
Q2. 外部委託先が報告書の作成・提出まで代行してくれますか? A. 委託先によって対応範囲は異なります。集計データの提供までを委託の範囲とし、労基署への提出自体は事業者側の責任で行うケースも多いため、委託契約の範囲を事前に確認しておくことをおすすめします。
Q3. 提出後に記載内容の誤りに気づいた場合はどうすればよいですか? A. 所轄の労働基準監督署に相談のうえ、訂正の要否や方法を確認してください。自己判断で放置せず、早めに問い合わせるのが安全です。
Q4. 集団分析を実施していない場合、報告書はどう記入しますか? A. 集団分析の実施の有無を尋ねる欄に「未実施」である旨を記入します。集団分析は現時点で努力義務であり、未実施であること自体が提出義務に影響することはありません。
Q5. 労働保険番号が分からない場合はどこで確認できますか? A. 労働保険の年度更新の申告書控えや、労働局・労働基準監督署から届く通知書に記載されています。不明な場合は所轄の労働局に問い合わせて確認できます。
まとめ
ストレスチェック結果等報告書は、実施そのものを労基署に届け出るための書類であり、記入項目の大半は「在籍労働者数」「受検者数」「面接指導実施者数」といった集計値です。つまずきやすいのは人数のカウント時点や、面接指導実績がない場合の扱いですが、いずれも実態の数値をそのまま記入すれば問題ありません。2025年1月からはe-Gov電子申請が原則となっている点もあわせて押さえておきましょう。
なお、報告書の作成以前の段階——実施体制の整備や社内規程の文書化、対象者の範囲確認、実施者の確保——でつまずくケースも少なくありません。あわせてストレスチェック実施規程の作り方や実施者の資格要件、ストレスチェックの対象者の記事もご参照ください。
自社での実施体制づくりから始めたい方は、ストレスチェック義務化の完全ガイドで制度全体の流れを確認したうえで、Smart Stress Checkのようなツールを使って調査票の配布・集計を効率化する方法も検討してみてください。