実務ノウハウ

ストレスチェックの外部委託先の選び方|契約前に確認する6項目【50人未満向け】

ストレスチェックの外部委託先を選ぶ際に契約前に確認すべき6項目を解説。実施者の提供有無、面接指導の範囲、データの扱い、報告書支援まで、50人未満の中小企業向けにFAQ形式で整理します。

#ストレスチェック#外部委託#中小企業

「ストレスチェックは外部に委託すれば、あとは何もしなくていい」——そう思って委託先を探し始める担当者は少なくありません。ですが、これは半分正解で半分間違いです。委託できるのは調査票の配布・集計・高ストレス者の判定といった実務の一部であり、実施義務そのものは委託後も事業者に残ります。この記事では、委託先に何を任せられて何が会社に残るのかを整理したうえで、契約前に確認しておきたい6項目、そして「安いプラン」に潜む落とし穴、50人未満の会社が現実的に選べる3つの組み合わせをまとめます。

委託しても会社に残る責任

まず押さえておきたいのは、ストレスチェックの実施義務は労働安全衛生法上、事業者(会社)に課されているという点です。委託先に業務を任せても、この義務そのものが委託先に移るわけではありません。

実施義務は事業者にあります。委託先が調査票の配布から高ストレス者の判定、結果通知までを一手に引き受けてくれたとしても、「うちはちゃんとストレスチェックを実施したか」を最終的に問われるのは会社側です。委託先の対応が不十分だったとしても、労基署への説明責任は事業者から消えません。

衛生委員会での調査審議も会社の仕事です。誰を実施者にするか、どの調査票を使うか、集団分析をどう扱うかといった事項は、衛生委員会(または安全衛生委員会)で調査審議したうえで社内ルールとして定める必要があります。委託先に「全部お任せ」しても、この調査審議のプロセスまで代行してもらえるわけではありません。50人未満で衛生委員会の設置義務がない事業場でも、労働者の意見を聞く機会を設けることが望ましいとされています。

記録の保存責任も残ります。ストレスチェックの結果は労働安全衛生規則第52条の13により原則5年間の保存が必要です(詳しくはストレスチェック結果の保存期間を参照)。委託先のシステム上にデータが残っていても、契約終了後にそのデータがどうなるかは会社が把握しておくべき事項です。

契約前に確認する6項目

委託先を比較する段階で、価格やサービス名の華やかさだけで決めてしまうと、あとから「思っていたのと違う」というギャップが生まれがちです。次の6項目は、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。

確認項目 チェックすべきこと
①実施者の提供有無 委託先が医師・保健師等の実施者を提供するのか、自社の産業医を実施者として使う前提なのか
②面接指導の範囲 高ストレス者への面接指導が基本料金に含まれるか、別料金か、そもそも対応可能か
③集団分析の単位 部署・職種単位の分析に対応しているか、10人未満の部署をどう扱うか
④データの保持・返却 個人結果のデータを誰が保持し、契約終了時にどう返却・消去されるか
⑤報告書作成の支援 労基署へ提出する検査結果等報告書の作成をどこまで支援してくれるか
⑥未受検者へのフォロー 受検率が低かった場合、未受検者への働きかけをどこまでやってくれるか

①実施者の提供有無

厚生労働省の「ストレスチェック制度導入マニュアル」では、日頃から職場の状況を把握している産業医が実施者になることが望ましいとされています。委託先の医師が実施者になるケースと、自社の産業医が実施者(または共同実施者)となり委託先は事務・集計のみを担うケースがあり、どちらの前提でサービスが組まれているかは事業者によって異なります。「実施者は誰なのか」を契約前にはっきりさせておかないと、いざ高ストレス者が出たときに「うちの担当範囲ではない」という食い違いが起きかねません。

②面接指導の範囲

高ストレス者と判定された労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務があります。これが基本料金に含まれているプランもあれば、面接指導の都度追加料金がかかるプランもあります。高ストレス者が何人出るかは事前に読めないため、面接指導の料金体系は必ず確認しておきましょう。

③集団分析の単位

部署や職種ごとの集団分析は、職場環境改善につなげるうえで重要な情報です。ただし厚生労働省の指針では、原則10人未満の集団については、全員の同意がない限り結果を事業者に提供してはならないとされています。個人が特定されるおそれのない方法(合計点の平均のみを算出するなど)であれば、衛生委員会での調査審議を経て10人未満でも分析可能というただし書きもあります。小規模の部署が多い会社は、委託先がこの点にどう対応しているかを確認しておく必要があります。

④データの保持・返却

個人のストレスチェック結果は、本人の同意がない限り実施者・実施事務従事者側で保管し、事業者はアクセスできません。委託先のシステムにデータが蓄積されていく形が一般的ですが、契約を解約した場合にそのデータがどう扱われるか(返却されるのか、消去されるのか、一定期間保持されるのか)は事業者側であらかじめ把握しておくべき事項です。

⑤報告書作成の支援

常時50人以上の事業場は、ストレスチェックの実施状況を労基署へ報告する義務があります(正式名称は「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」。詳しくは報告書の書き方を参照)。委託先によっては報告書の下書き作成まで支援してくれるところもあれば、集計データを渡すだけで報告書作成は事業者側の作業というところもあります。なお現時点(2026年9月)で常時50人未満の事業場には実施義務そのものがなく努力義務にとどまるため、報告書提出義務も課されていません。2028年4月1日の義務化以降、50人未満の事業場にどこまで報告義務が及ぶかは、続報を確認したうえで対応する必要があります。

⑥未受検者へのフォロー

受検率が低いと、集団分析の精度が落ちるだけでなく、高ストレス者を見逃すリスクも高まります。委託先が未受検者へのリマインドをどこまでやってくれるか、あるいは事業者側の作業になるのかは、担当者の工数に直結するポイントです。

「安いけど実施者がいない」プランで起きること

外部委託先を比較していると、極端に安いプランに出会うことがあります。ここで注意したいのが、料金の安さが「システム利用料だけ」で、実施者の確保が別枠になっているケースです。

システムとしての調査票配布・集計機能は安く提供できても、実施者(医師・保健師等)が関与しなければストレスチェックとしては成立しません。「システムは契約したが、実施者を誰にするかは自分たちで考えてください」というプランを選んでしまうと、結局は産業医契約や地域産業保健センターへの相談を別途進める必要が出てきます。

「思ったより安かったから」と契約してから、実施者確保の壁にぶつかって振り出しに戻る——というのは、外部委託でありがちな失敗パターンです。契約前に「このプランには実施者が含まれているか」を必ず確認してください。

50人未満の会社が現実的に取れる3つの組み合わせ

50人未満の事業場は、2028年4月1日の義務化までまだ準備期間があります。現実的に取れる組み合わせは、大きく3パターンに分かれます。

パターン1:全部委託。EAP事業者や産業保健サービス会社に、実施者の提供から集計、面接指導までをまとめて依頼する形です。費用相場は1人あたり年間500〜3,000円程度(詳しくは費用相場の比較を参照)。担当者の工数を最小限にしたい会社に向いています。

パターン2:一部委託+地域産業保健センター。調査票の配布・集計はクラウドツールなどで自社対応し、実施者の確保や高ストレス者への面接指導は地域産業保健総合支援センターの無料支援を活用する形です。2026年2月に厚生労働省が公表した「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」でも、この無料公的支援の活用が案内されています。事前申込が必要で利用回数に制限がある場合があるため、早めに地域のセンターへ相談しておくと安心です(詳しくは産業医がいない会社の対応方法を参照)。

パターン3:ツール+外部実施者。調査票配布・集計・報告書作成の支援はSmart Stress Checkのような無料クラウドツールを使い、実施者だけを地域産業保健センターや個別契約の産業医で確保する形です。システム部分のコストを抑えつつ、実施者の専門性は外部に任せられる組み合わせとして、50人未満の会社では選ばれやすいパターンです。

どのパターンが合うかは、社内に実施者候補がいるか、担当者の工数をどこまで割けるか、予算感によって変わります。まずは自社がどのパターンに近いかを整理するところから始めてみてください。

FAQ

Q1. 外部委託の費用相場はいくらですか?

EAP事業者への全部委託の場合、1人あたり年間500〜3,000円が目安です。従業員50人なら年間2.5万〜15万円程度になります。詳しい試算は費用相場の比較記事を参照してください。

Q2. 社労士事務所にストレスチェックの実施を頼めますか?

社労士は実施者の資格要件(医師・保健師等)を満たさない限り、自ら実施者になることはできません。ただし調査票の配布・集計といった実施事務従事者としての業務や、労務管理全般のアドバイスを社労士事務所に依頼することは可能です。実施者の確保は別途検討する必要があります。

Q3. 実施者を社内で立てることはできますか?

医師・保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師であれば、社内の人であっても実施者になれます。人事権を持つ人は実施者になれない点には注意が必要です。詳しくは実施者の資格要件を参照してください。

Q4. 委託先を途中で変更することはできますか?

契約上は可能ですが、年度の途中で切り替えると、それまでの受検データの引き継ぎや、実施時期がずれることによる翌年度以降のスケジュール管理に注意が必要です。切り替える場合は、次回実施のタイミングに合わせて契約を見直すのが現実的です。

Q5. 産業医がいない会社でも外部委託はできますか?

できます。委託先が実施者を提供するプランを選べば、自社に産業医がいなくても問題ありません。産業医がいない会社向けの選択肢はこちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ

外部委託は担当者の負担を大きく減らせる手段ですが、「委託すれば会社の責任がなくなる」わけではありません。実施義務・衛生委員会での調査審議・記録の保存責任は委託後も会社に残ることを踏まえたうえで、契約前には実施者の提供有無、面接指導の範囲、集団分析の単位、データの扱い、報告書作成の支援、未受検者へのフォローの6項目を確認してください。

50人未満の会社であれば、全部委託にこだわらず、地域産業保健センターの無料支援や無料クラウドツールを組み合わせる選択肢もあります。まずは自社の状況に合わせて、Smart Stress Checkで無料のクラウドツールを試しながら、どの組み合わせが現実的かを検討してみてください。

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